「マンガ県くまもと」をキャッチフレーズとした産学官金連携の取り組みについて、官としての展望を熊本県知事の木村敬さんに聞きました。

熊本県知事 木村敬さん
きむら・たかし/1974年生まれ。1999年、東京大学法学部卒業、自治省(現・総務省)入省。2012年から16年にかけて熊本県庁に出向。20年、熊本県副知事就任。24年より現職。
マンガ文化が
熊本の誇りになる。
それをめざしています。
——熊本県として現在イメージしている「マンガ県くまもと」とは、どのようなものかをうかがえますでしょうか?
マンガやアニメには、世代や地域を超えて人々を元気づける力、そしていわゆる“聖地巡礼〟など新たな観光を創出する力があり、本県ゆかりの作品と連携することで、交流人口の拡大や地域の活性化につながると考えています。
本県においても、作者や作品の舞台などで県にゆかりのあるマンガ・アニメ作品と連携した取り組みが進んでおり、このような取り組みは、熊本でしかできない体験やイベントの開催、コラボ商品の販売などを実現し、本県観光の主要なコンテンツの一つに成長し、また、地域の誇りになっていると感じます。
また、令和3年には産官学金で構成される「くまもとマンガ協議会」が設立されました。県内在住の漫画家やイラストレーターと、県内企業等とをマッチングする仕組みづくりなど、漫画活用の幅を広げていく取り組みが進められています。
さらに、令和4年には熊本大学に国際マンガ学研究教育センターが、令和5年には高森高校に公立高校としては全国初となるマンガ学科が、平成音楽大学に声優コースが相次いで開設されるなど、人材育成やマンガを文化として学ぶ環境も整いつつあります。
こうした取り組みが進むことで、マンガそのものの価値が向上するとともに、マンガを活用した多様な団体の活動が活発に行われ、官の立場からは、マンガを通じて熊本の魅力を発信していくことで、マンガ文化が地域の誇りになることが、私の思う「マンガ県くまもと」のイメージです。
——いま、「マンガ県くまもと」として描いているビジョンはどのようなものか、うかがえますでしょうか? 将来的にこうありたい、という熊本県としての構想をうかがえますと幸いです。
今後も多様な人々による取り組みが広がるとともに、さまざまな環境が整い、受け入れる人たちの意識も変わっていくことで、熊本が国内外のマンガファンやクリエイターにとって「訪れたい」「住みたい」「学びたい」県として選ばれることです。
特に、昨今の若者の流出という課題に対し、地域において若者の関心度の高いマンガ・アニメ等と連携した取り組みを行うことが、地域の方も気づかなかった新たな魅力の発見につながり、定住やUターンの動機づけの一つになるとも感じています。
また、地域が主体的に関わり、作品の世界観と地域資源を融合させることで、より深みのある観光体験、地域の魅力につながるものと確信しています。
マンガを軸に、地域資源や観光、教育、人材育成などを有機的に結びつけることで、熊本ならではの文化的価値を創出し、県民の誇りとなるような持続可能なビジョンを実現してまいります。
——ありがとうございます。それらを実現するために、熊本県としてどのようなことに取り組んでいらっしゃるか、具体的にうかがえますでしょうか?
まずは、冒頭でお伝えした「観光コンテンツ」としての磨きあげです。作品と連携し、スタンプラリーやARなどのアプリ開発やイベントの実施、地元交通事業者等と連携したタクシープランやバスツアーの造成など、地域を周遊してもらうための仕組みづくりを行ってきました。
また、公式イベントの誘致や、声優等に協力をいただいたプロモーション、コラボイラストの制作など、熊本ならではの取り組みを進めてきました。
このようなマンガ・アニメと連携した取り組みは、県内各地でも徐々に広がりを見せておりますが、さらに広げていくためには、原作者や、版権を管理している出版社はもとより、地元の市町村や事業者、教育機関の理解と協力がきわめて重要です。
県では、これまで原作者や出版社等と信頼関係を構築してきた実績をもとに、地元の市町村や事業者等にも取り組みの例やノウハウを伝えるとともに、地域の取り組みを後押しすることで、地域が一体となって取り組む雰囲気を醸成してきました。
また、本県ゆかりのマンガ・アニメの発掘・活用はもとより、出版社等との連携を深めながら、県内各地の特色を活かし、それらを舞台とした新たな作品の創出など、地域活性化につながる施策が展開できるよう、誘致活動などにも取り組んでいます。
うれしいことに、最近では作品側から、連携のお話をいただくこともあり、県としてもこのような動きを追い風としながら、マンガ・アニメの力を最大限に活用して、熊本の活力創造、「マンガ県くまもと」の推進に取り組んでまいります。
