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冬本番。あなたに知ってもらいたい、熊本のだご汁のこと。①高森田楽保存会

2026/01/09

冬本番。あなたに知ってもらいたい、熊本のだご汁のこと。①高森田楽保存会

Photo/
Uchimura Yuzo
Text/
Taninaka Takashi, Aoki Ayako

「だご汁」とは熊本弁で、「だんご汁」のこと。
手間をかけずに料理でき、腹持ちもよいことから、農作業の合間などに食べられ、親しまれてきた郷土料理です。
県内には、各地域にさまざまなだご汁がありますが、どれも違った魅力があります。
今回ご紹介するのは、阿蘇と熊本市内の2種類。
あなたも、食べてみませんか?

だご汁

地元・阿蘇で採れた山菜たっぷりのだご汁は、やさしい味わい。
体の芯まで温めてくれます。

囲炉裏の炭火

囲炉裏の炭火で温まりながら、田楽味噌が香ばしく焼ける香りを楽しめます。

阿蘇の食文化。
山菜だご汁と
高森田楽を
食べてみませんか?

熊本県最東部に位置する高森町に伝わる、高森田楽。
同町の上色見地区を発祥とする郷土料理です。
それを後世にと発足した「高森田楽保存会」は、阿蘇のだご汁の伝承と普及にも力を入れています。地元の山菜たっぷりなだご汁は、阿蘇では田楽とともに食べられてきました。保存会では、それを高森の食文化ととらえ、田楽とともにだご汁を提供しているとのこと。
取材を通して見えてきた、阿蘇のだご汁のこと、高森田楽のことをお伝えします。

外国人観光客も
食べに来る郷土料理。

 南阿蘇の宿場町として栄えた高森町。その中心部から少し離れた上色見地区に、料理店「高森田楽保存会」(以下、保存会)があります。店内には、40以上の囲炉裏。温かな色合いの炭火がもたらす安心感と、焼けた味噌の香ばしさが食欲をそそります。
 お座敷の襖には、「朋有り遠方より来たる」(論語・学而篇)と書かれています。その言葉通り、遠く海の向こうから来る観光客もひきつける人気店。台湾や中国から、ヨーロッパ諸国まで、世界各地から食べに訪れる人があとを絶ちません。
 注文しただご汁が、運ばれてきました。自家製の風味豊かな味噌と、採れたての地元の山菜がたっぷり入った香りのよい汁。だご(団子)にも煮汁がしっかりと染みこみ、ひと噛みごとにこぼれ出すほどです。
 「だご汁の味噌は、お客様に喜んでもらえるものをと試行錯誤を続けた結果、いまの味ができました。量が出るので毎日仕込んでいます」と語る、女将の本田和可さん。
 ほかにも、いりこや干ししいたけなどで、4時間かけて出汁をとっていること。具材の野菜はその日の朝に仕入れたもののみを使用していることを教えてくれました。それらを知ってからいただくと、この料理へのつくり手の愛情も伝わってきて、おいしさもひとしおの印象です。

阿蘇の料理を満喫できるコース料理

高森田楽コース
3,000円(税込)

こんにゃくと野菜、豆腐、鶴の子芋、山女魚の田楽に、生揚げ、とうきびご飯、香の物、山菜だご汁がついた阿蘇の料理を満喫できるコース料理。

高森田楽の歴史と
担い手の願い。

 だご汁とともに提供された田楽も、阿蘇の代表的な郷土料理の一つ。上色見地区特産の里芋「鶴の子芋」をはじめ、こんにゃくと野菜、豆腐、山女魚が素材。どれも外はカリッ、なかはホクホク。素材の味、味噌の香ばしさ、甘味が調和します。一品料理として出てきたのは生揚げ。ジューシーな味わいが人気で、これを食べるために遠方から足を運ぶお客様もいるそうです。
 だご汁とともに、阿蘇の食文化から切っても切り離せない高森田楽。そのおいしさと由来に興味が湧き、保存会の2代目店主・本田研一さんと、息子で3代目の有さんに、その歴史について聞いてみました。
 高森田楽のはじまりは、およそ700年前、上色見良連寺建立の際、お寺の落慶と豊作への感謝をこめて、田楽で祝ったこと。越冬料理として、鶴の子芋、しいたけ、豆腐、ウド、タラの芽、沢ガニなどを竹串に刺して味噌を塗り、囲炉裏の炭火で焼いて食べていました。
 固くて煮崩れがない鶴の子芋は、火山灰土でしか育たないため、上色見の人々にとって貴重な作物だったそうです。しかし、昭和28年、阿蘇を中心に白川の沿川一帯で水害が発生。鶴の子芋農家は存続の危機に瀕しました。そこで立ち上がったのが、保存会初代店主・本田耕亮氏ら13名の高森町住民です。
 耕亮氏は、同町の文化を後世にとの思いから、高森田楽を振る舞う行事「田楽祭り」をはじめます。少しずつ認知が広がり、やがて保存会は常設店舗を構えるに至りました。
 保存会の田楽の食材はすべて地元の生産者がつくったもの。高森町の鶴の子芋農家、竹内辰三さんに聞いたところ、鶴の子芋は市場には流通せず、農家が自宅で食べるほか、地元の田楽焼きの店に卸すにとどまる希少なものだそうです。
 700年の歴史ある、高森田楽。だご汁とともに、人と話しながら食べるのにおすすめの料理です。あなたも大切な人と囲炉裏を囲んで語らいながら、食べてみませんか?

田楽の具材はすべて阿蘇産

田楽の具材はすべて阿蘇産。

火力の強い県内産の炭でカリッと焼きます

火力の強い県内産の炭でカリッと焼きます。

鶴の子芋

高森町上色見地区の特産「鶴の子芋」。

本田研一さん、和可さん、有さん

左から、本田研一(ほんだ・けんいち)さん、
和可(わか)さん、有(ゆう)さん。

「高森田楽保存会」自家製の田楽味噌

「高森田楽保存会」自家製の田楽味噌。

歴史が感じられる趣のある店内

築150年。歴史が感じられる趣のある店内です。

column

栄養面から見た
だご汁の魅力。

 「だご汁は野菜が多く入っているため、カリウムが多く、つい摂りすぎな塩分の排出を促してくれる効果があります。また、出汁によく使われるいりこや干ししいたけは、アミノ酸が豊富。私たちの体をリラックスさせてくれるGABAも含まれています」。だご汁の栄養と効能について、熊本県立大学教授の友寄博子さんはそう話します。
 ほかにも豚肉を入れることで、不足しがちなビタミンB1をしっかりと摂取できるそう。ビタミンB1は、すこやかに生活するためのエネルギー生産や、皮膚や粘膜の健康維持を助けてくれます。豆腐を入れるとさらに効果的。一日に必要な量のたんぱく質を補うことが可能です。
 「だご汁は、さまざまな栄養素をバランスよく手軽に摂取できる、体にやさしい料理。塩分も控えめなので、栄養たっぷりのスープを安心して飲み干せることもうれしいですね」(友寄さん)

店舗情報

高森
田楽保存会

高森田楽保存会

 

●所在地/〒869-1601

熊本県阿蘇郡高森町上色見2639

●営業時間/11:00-15:00

●定休日/毎週火・水曜日

●電話番号/0967-62-0234

●WEBサイト/高森田楽保存会

「pomodoro」(ポモドーロ)とは……「pomodoro」(ポモドーロ)とは……

 「熊本がもっとおいしくなる」をコンセプトに、熊本のグルメ情報や文化をお伝えするフリーマガジンです。年3回発行し、熊本市内の交通要所や観光名所等で配布しています。

 pomodoroは、トマトを意味するイタリア語。
 イタリア料理の食材と、熊本で採れる食材は共通点が多いことから名付けました。

 フリーマガジンとウェブ版である当サイトは、阿蘇の高森町に第二本社を置く出版社コアミックスが発行・運営しています。