なぜ熊本の水は豊かで、きれいで、おいしいのか?

2026/07/17

なぜ熊本の水は豊かで、きれいで、おいしいのか?

Photo/
Yamagashira Noriyuki, Mori Kenichi
Text/
Sakai Yuji

「蛇口をひねればミネラルウォーター」。
これは、熊本の水道水のきれいさ、おいしさを語るとき、しばしば目にすることのある言葉です。
また、台湾積体電路製造(TSMC)を始め、洗浄工程に大量かつ清らかな水を必要とする半導体メーカーが、熊本を工場の地に選び、進出しています。
そんな熊本の、豊かで、きれいで、おいしい水は、どこから来ているのでしょうか?

2013年、熊本市は地下水保全の取り組みが評価され、日本の都市で初めて国連の「生命の水(Water For Life)」最優秀賞に選ばれました。

熊本地域の地下水システム図

熊本地域の地下水システム図

阿蘇外輪山から白川中流域を経て、熊本市内中心部の江津湖周辺へ至ります。
画像提供:熊本市水保全課

熊本の地下水。
その豊かさの秘密。

 熊本は、全国的にも際立って降雨量が多い地域であることをご存じでしょうか? 日本の年間平均降水量が1,700㎜である一方、熊本では2,000㎜もあり、阿蘇山ではなんと3,000㎜もの降水量があります。この雨の多さが、熊本に地下水の恵みをもたらす背景にあります。
 しかし、雨が多いことだけでは、熊本の地下水の豊かさを語ることはできません。熊本の地下水保全の取り組みを推進する、熊本市環境局環境推進部水保全課に聞いたところ、主に2つの要因がありました。
 まず1つめは、阿蘇の地層がもたらす自然の恵みです。阿蘇火山は長い年月をかけて4度の大火砕流噴火を繰り返しました。これにより厚い火砕流が積もり、熊本地域の地下に豊かな地層が形成されました。この地層は水が浸透しやすく、100m以上の厚さで分布しています。さらに、その底には硬い基盤岩があるため、降った雨が地下にたっぷりと蓄えられるのです。
 2つめは、熊本城築城主・加藤清正がもたらした「かん養域」(地下水が生まれる地域)です。清正は土木工事や治水にも尽力しました。水田開発も推進し、白川中流域(大津町、菊陽町周辺)に堰(せき)や用水路を築いて大規模な水田を開きました。
 この地域の土壌は水をよく浸透させる性質があったため、大量の雨水が地下に浸透し、地下水の量を一層増やすことになったのです。この水田開発は、その後も加藤家や細川家の子孫によって受け継がれました。その結果、白川中流域では現在、約9千万㎥もの地下水がかん養されています。
 このように、熊本地域では雨の多さ、土地の特性、人の知恵が結びつき、いまから400年以上も前に、現在の熊本の水循環系と豊かな地下水が形成されていたのです。

5号井(ごうせい)

水に遊び、水に憩う。
水と人との距離の近さを熊本にいるとおぼえます。

川が多く海に面した熊本

川が多く海に面した熊本は、陸路より大量に早く荷物を運べる舟運が盛んでした。

5号井(ごうせい)

江津湖近くにある健軍水源地。
写真は11本ある井戸のうち、1日にプール約40杯分もの地下水が湧き出す5号井(ごうせい)。

なぜ、
きれいで
おいしいのか?

 「熊本市では水道水源のすべてを地下水でまかなっています。熊本地域の良質な地下水を使っているので、各家庭への配水前の処理は、法律で定められた最低量の塩素を加える程度です」。そう教えてくれたのは、市内最大の水源である健軍(けんぐん)水源地を案内してくれた、熊本市上下水道サービス公社の吉村桂典(よしむら・けいすけ)さん。そのきれいで、おいしい水はどのように生まれるのでしょうか?
 雨が地上に降ると、地下にしみこんで地下水に変わります。地下水は地層の間をゆっくりと流れ、長い歳月をかけて磨かれていきます。この間、ミネラル分や炭酸分がバランスよくとけ込み、おいしくて体にやさしい天然水となるのです。この、いわば“天然のミネラルウォーター”がほぼそのままに、家の蛇口をひねれば出るのが熊本なのです。
 なお、熊本県民約170万人のうち、4割強の約74万人が暮らす熊本市では、1924(大正13)年の通水開始以来、水道水はすべて地下水を用いています。一日あたり平均22万㎥使用されるうち、4分の1にあたる6万㎥もの水が、市内中心部にある健軍水源地でまかなわれます。
 「熊本の“天然のミネラルウォーター”が市中心部にある江津湖(えづこ)周辺にたどり着くまでには、阿蘇外輪山西麓付近から約20年、白川中流域あたりからは5年から10年かかると推測されています。
 阿蘇で採水した水と、ここで汲んだ水を飲み比べると、ここの水のほうがコクがあってまろやかに感じます」。そう言って吉村さんが紙コップに注いでくれた健軍水源地の井戸水は、たしかにコクがあり、体にすっとしみ込んでいく心地でした。

「pomodoro」(ポモドーロ)とは……「pomodoro」(ポモドーロ)とは……

 「熊本がもっとおいしくなる」をコンセプトに、熊本のグルメ情報や文化をお伝えするフリーマガジンです。年3回発行し、熊本市内の交通要所や観光名所等で配布しています。

 pomodoroは、トマトを意味するイタリア語。
 イタリア料理の食材と、熊本で採れる食材は共通点が多いことから名付けました。

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