無農薬、無肥料。足さない、引かない「天の製茶園」の和紅茶。

2026/09/24

無農薬、無肥料。足さない、引かない「天の製茶園」の和紅茶。

Photo/
Mori Kenichi, o.i.g.d.c.
Text/
Chase Sutherland, Taninaka Takashi

熊本県の最南部に位置する水俣市の山あい。製茶90年の歴史を持つ「天の製茶園」3代目園主の天野浩(あまのひろし)さん(47歳)はいま、約12種類もの紅茶を栽培。常に新商品の開発を行い、家族で製品化、販売までを一貫して行っています。そんな天野さんがなによりも大切にするのは、「土地の特徴を生かし、無農薬・無肥料」で育てること。そこにかける思いや取り組みをうかがいました。

熊本県最南部に位置する、水俣市

熊本県最南部に位置する、水俣市。西は不知火海に面して天草の島々が望め、海の幸と山の幸に恵まれた風光明媚な土地。

「無農薬・無肥料」での紅茶づくりにかける想い

 10月中旬。天野浩さんの紅茶園を訪れ、「紅茶づくりで大切にしていること」を聞きました。それは、「安全で美味しい紅茶を育てるために、農薬や肥料を使わず、その土地の特徴を生かした環境で栽培することです」と天野さんは言います。
 「90年近く、三代に渡っていろいろな土地で紅茶栽培を試してきた結果、その土地の特徴を生かした紅茶づくりがいちばんだと気づきました。たとえば、この紅茶畑のように、標高が高い畑ですと、寒暖差があるため紅茶本来の美味しさが引き出され、味の奥行きが生まれやすいのです。また、うちの紅茶園では肥料を使っていないため、水俣の土壌や水源の性質が色濃く出て、すっきりした味わいになります。そして、農薬も使わないので安全で安心の商品をお客様に届けることができるのです」。
 しかし、当然ですが、この栽培方法には大きな課題がありました。1つは、人力での雑草取りの手間。「雑草取りも機械に頼るのではなく、家族で手作業で行なっています。特に夏場は、雑草の伸びるスピードが尋常ではなく、過酷ですね」。課題の2つめは、紅茶畑への適切な水の供給です。天野さんによると、紅茶の栽培には土中の微生物が重要な役割を果たします。土中に十分な水分がないと微生物が死に、木の健康が損なわれてしまうのです。逆に、土が湿りすぎていると、紅茶の木同士で病気が蔓延する恐れがあります。
 そのため、5年もの歳月を費やして試行錯誤した結果、タネから紅茶の木を育てる方法にたどり着きました。そうすることで主流の栽培方法である挿し木(育った紅茶の木の茎を切り、地面に挿し生育する方法)よりも、根がしっかり張られ、水や栄養の吸収が良くなり、病気にも強くなることがわかったのです。
 天の製茶園の紅茶は、紅茶特有の渋みがなく、すっきりした味わい。香りはあまり強くなく、口に含むとほんのり甘さを感じます。この美味しさは、さまざまな知られざる苦労を乗り越えて実現されたものと知り、私たちは驚きと敬意をおぼえずにはいられませんでした。

紅茶
紅茶
紅茶

熊本から世界中に
「和紅茶」を届けたい

 天野さんは、全国の紅茶園の未来にも目を向けています。「若い人たちに日本の紅茶に興味を持ってもらい、栽培の知識と方法を引き継いでいければ」。そのために、若者にも親近感が湧きやすいメープルや金木犀、生姜を混ぜた新商品開発にも積極的です。
 また、天の製茶園近くの森の中で紅茶本来の旨味を味わう「お茶会」を無料で開き、紅茶と若い人をつなぐ活動にも取り組んでいます。
 そんな天野さんのもとには、海外の紅茶の資料や紅茶の木そのものが送られてくることがあります。「ポルトガルの紅茶農家さんから依頼され、現地での紅茶栽培のアドバイスをしに行ったこともありました」。所狭しと海外の紅茶の葉や資料が収められた棚から、日本の紅茶だけでなく、世界中の紅茶の知識や文化を学び続けようとする天野さんの情熱と、その一途な半生が伝わってくる気がしました。

「日本の紅茶づくり」を
100年後へ

 「この先、熊本県の紅茶農家の人たちと一緒に、世界に自分たちの和紅茶(日本国産の紅茶)を届けられたら」と、天野さんは語ります。九州から台湾に紅茶を輸出していることもあり、和紅茶を世界中へ輸出できる流通の仕組みを模索しています。「九州は紅茶栽培が盛んな土地。中でも熊本は栽培の歴史が長いため、世界進出を期待する声が私の紅茶園にも寄せられることがあります」
 天の製茶園は、「MORI TO TANE TO OCHA」という新しいブランドも立ち上げ、紅茶の品質向上にも努めつつ、環境にも優しい紅茶づくりを推奨しています。天野さんの栽培方法に合わせて、「MORI TO TANE TO OCHA」のパッケージには、環境に配慮したリサイクル素材が用いられ、「自然の恵み」で紅茶ができていることをデザインで表現されています。
 こだわり抜かれた天の製茶園の和紅茶。読者のみなさまも、ぜひ一度飲んでみてはいかがでしょうか?

紅茶の温度

温度によっても、紅茶の味が変わるため、湯冷ましを使い、紅茶の温度を調整して楽しむことを天野さんは勧めてくれました。

天の製茶園産の「青茶(烏龍茶)」

天の製茶園産の「青茶(烏龍茶)」。
ゆっくりと自然に発酵させたことで花のような独自の香りがします。

手作業で作られる国内では貴重な「黒茶」

手作業で作られる国内では貴重な「黒茶」。
乳酸菌が豊富に含まれ、身体を内側から整えてくれます。

天野浩さん

「変わった紅茶があると聞けば、全国どこにでも行きます」と語る姿に、天野さんの紅茶にかける想いが伝わってきます。

茶の種子と根を張り出した茶の挿し木

茶の種子と根を張り出した茶の挿し木。
種子から育てた茶の木は、地面にしっかり根を張るため、豪雨などの災害にも強くなります。

2022年11月より発売された新商品

「MORI TO TANE TO OCHA」。
2022年11月より発売された新商品。
環境に配慮された資材で包装されています。

column

国産の紅茶は
極めて稀少です

▼「茶」の国内生産量における「紅茶」の比率
「茶」の国内生産量における「紅茶」の比率
 
日本国内の「紅茶」生産比率は「茶」全体のわずか0.5%。
和紅茶(日本産の紅茶)は極めて希少です。

※全国茶生産団体連合会調べ

 

▼県別紅茶生産比率
県別紅茶生産比率
 
鹿児島県を筆頭に九州が紅茶生産を牽引。
「野焼き」が盛んだった九州は、茶の木が多く自生していることも要因かもしれません。

※全国茶生産団体連合会調べ

店舗情報

株式会社
天の製茶園

●住所/〒867-0174 熊本県水俣市石坂川370−85

●お問い合わせ/amanoseicyaen@gmail.com

●電話番号/096-669-0918

●WEBサイト/https://www.amanoseicyaen.com/

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 pomodoroは、トマトを意味するイタリア語。
 イタリア料理の食材と、熊本で採れる食材は共通点が多いことから名付けました。

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